マムシ流 つれづれ草 第55回

【鎮魂の季節を悼みつつ、未来の平和を願おう!!】

 老若男女諸君! いよいよ桜の便りもすぐそこだ。例年、桜のほころぶ時期が早くなっているけど、やっぱり春はいいね! しかも、オレが生まれた月とくれば、素晴らしい季節に決まってるよ、ハハハ。
 でもね、3月前半というのは、鎮魂の季節だな。3月は10日と11日だ。
 11日は言わずと知れた、東日本大震災の日だ。13年になるよね。今年は元日に能登大震災があったから、なおさら、改めて震災の恐ろしさをさまざまなメディアで取り上げていた。これからは日本列島全土のどこで地震が起こっても不思議ではない時代に入ったと言われているよな。これだけは自然の、地球の起こす仕業だから、どうすることもできないが、一人ひとりが、自分事として、もしもに備えるという心構えは必要だよ。そして、行政にはしかるべき備えに着手して欲しい。変な無駄遣いをしないでな。
 そして、もう一方は10日だ。ご存知のとおり、東京大空襲で、10万人の尊い命が奪われた日だよ。オレがいつも言うように、この日をもっともっとクローズアップして、メディアは取り上げるべきなんじゃないかな。2024年という現代においては、戦争の抑止ということは現実問題としてとらえて、もっと声高に言わなければならないだろ。今こそ、全世界に向けて、日本が発信しなくちゃならない大事なことじゃないか。79年前のことだからと風化させるのは絶対にダメだ!
 現実にウクライナやガザが、まさに今、戦禍のなかにあって、それ以外にもいろんな火種が世界中にくすぶっているだろ。これからを生きる若者たちは他人事と考えてはいけない状況なんだぞ。東京大空襲について言えば、オレを含めて、当時のことを語れる人がどんどんいなくなっているけど、だからこそ喋れるオレたちが、どこへ行っても当時のことを喋り続けるというのはいつも言っているとおりだよ。

 先日は、台東区橋場の玉蓮院という浄土宗のお寺にお邪魔した。元和六年(1620年)創建。コロナで延びていた創建400年のお祝いに呼ばれてしゃべってきたんだよ。
 このあたりもまさに戦災に遭った地域だよ。ここのお寺は当時、横浜の内陸・小机に疎開していたので、御本尊様が残ったというんだ。立派なお寺だよ。
 オレは日蓮宗だけど、呼ばれりゃどこだって行って、ありがたい話をするよ、ハハハ。宗派なんて違ったっていいんだ。仏様の元ではみんな一緒だろ。そういう精神で皆が仲良くしていけば、争い事だって起こらないはずだ。世界中の宗教家が集まって宗教サミットでもやって平和を祈って欲しいもんだよな。

 平和といえば、ここには確実に平和な空間と時間があった。第18回『マムちゃん寄席』だよ。7月に3年ぶりに開催できた時にも増して、お客さんとの一体感を感じたのはオレだけじゃないと思うぜ。ラッキィ池田、外山惠理のナビゲートは安定感バッチリだ。
 鉄壁のリードオフマン。トップバッターは林家二楽の紙切りだ。この日は、オレの米寿の誕生日を祝してくれたよ。弟子の八楽とのコンビネーションも"切れ味"抜群だな。いい幕開けをありがとう! 
 2番手の松元ヒロも相変わらずの絶妙なスタンドアップ・コメディーだよ。相変わらずテレビじゃ絶対呼ばれねぇ、いいネタを転がしてくれたな。
 そして、3番手は、桂文治。先代文治さんはまむしプロダクション所属だったんだ。まくらからサゲまで、小気味の良いリズムで、会場を唸らせたぞ。いつもしないような裏話も披露してくれたしな。
 中入り後は、4番バッター・ナイツの二人だ。まぁ、こいつらは放っておいても、いつも通りのボケツッコミで、会場はドッカンドッカンと笑いの渦の中にいたよな。
 そして、玉袋筋太郎と外山惠理と席亭・オレの鼎談。どうだった? 
 予定外だったのは、オレがいつも世話になっている平澤呉服店のオヤジの悲報を、この日の朝に受け取ったんだよ。四季折々、オレが身につける服を和装の生地でアレンジして作ってくれた、オレより1年先輩の人だ。この日も、当初は会場に来てくれることになっていたんだが、容態が思わしくないというので心配していたんだよ。平澤さんがいつも言っていたのは、オレと同じように、戦争の悲惨さを語り継いでいこうということだった。その遺志を継がなければいけない人がまた一人増えちまったな。
 一方で、会場には西荻窪の須田時計店のオヤジ・喜八郎さん97歳がお出ましになった。元気なんだよ、このジジイ。いつもオレがあやかりたいと思ってる先輩の最右翼かもしれねぇな。喜八郎さん、どうかお元気でね。
 そうそう、この鼎談の途中では、サプライズゲストが二人、オレに花束を持って登場した。俳優の篠田三郎ちゃんと、オレの弟分、ウルトラマンのスーツアクター・古谷敏だ。
 スタイリッシュな二人に囲まれて、「オレが目立たねぇじゃねえか」と思わず叫んだね、ハハハ。でもありがたいよね。ウルトラマンタロウの三郎ちゃんと、ウルトラマン、ウルトラセブンで共演した古谷と、アラシ隊員、フルハシ隊員のオレのスリーショットだからな。こんなの円谷プロのイベントでもありえないぜ。二人ともありがとう。感謝します!
 さて、お待たせしたトリは、ようやく念願の登場とあいなった、立川志の輔だ。
 押しも押されもせぬ名人となった志の輔だけど、オレは48年前、談志に入門したばかりの彼を知ってるんだよ。そんなエピソードもまくらで話してくれた。
 これからの立川流を背負って立つ志の輔。そして談春、志らくにエールを送ろう。
 がんばって立川流を盛り上げてくださいよ。
 今回も、無事、『マムちゃん寄席』は大盛況のなか終わったが、いつもにも増して思ったのは、舞台と会場の皆さん、そしてスタッフも含めて、皆が思い思いの楽しみ方をして、自然と大団円となっていった感じがするんだよ。冒頭でも話したとおり、平和な空間と時間が満ち満ちていたよ。こんな気持ちを大切に、自分にとって、他者にとっての幸せとは何かをいつでも考えるようにして行動すれば、より良い空気が作れて、未来には平和が訪れるんじゃないかな。
 だからね、「老いる体にオイルを注ぎ、冥土近づく米寿かな」のオレだけど、まだまだ元気いっぱいで吠え続けるからな。覚悟しとけよ、ハハハ。

 さて、3月15日の『マムちゃんねる』は、前回に引き続き、90歳を迎え、未だ現役で元気にご活躍の、声の職人・羽佐間道夫さんの登場だ。若々しいお声で、軽妙洒脱に語っている姿は粋だぞ。ぜひリズム感あふれるオレとの喋りを存分に楽しんでくれ!
 そうそう、それからさ、先日、ラジオの収録でTBSラジオに行った時に、高嶋ちさこちゃんが、オレに会いたいと言って、収録スタジオを訪ねてくれたんだよ。その後、ビートルズを日本で仕掛けた人として有名なお父さんの弘之さん、そしてお姉さんがいるスタジオにお邪魔して一緒に記念撮影をしたんだ。明るい楽しい親子だぜ!!

 

 

(構成・伊波達也)

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