マムシ流 つれづれ草 第62回

【『九十歳。何とめでたい』スピリッツでいこう!】

 ジジイババア諸君! 大雨だったり、ムシムシしたり、猛暑だったり、体があっちに引っ張られたり、こっちに呼び戻されたりで、悲鳴をあげてねぇか。くれぐれも養生してくれよ。二十四節気では、もうすぐ小暑だ。梅雨の到来は遅かったが、これがいつまで続くんだろうな。あっという間に終わるとも言われているけど、長引くのかもしれないしな。
 まぁ、お天道様の仕業なんか、オレたちにわかるわけねぇから、あまり気にしないで楽しく過ごしていこうぜ。

 6月最終週金曜日は、『毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』だ。『金曜ワイドラジオTOKYO「えんがわ」』へ引っ越してから8ヶ月かな。玉袋筋太郎と外山惠理が仕切るこの番組で、この日はオレの前のコーナで、映画『老後の資金がありません』で、お世話になった前田哲監督がゲストに出てたんだよ。前田監督といやぁ、6月21日から全国ロードショーが始まった『九十歳。何がめでたい』が今、大きな話題だよな。映画の元となったエッセイを書いた作家の佐藤愛子さんを演じるのは、オレが『老後の資金がありません』で共演した草笛光子さんだよ。前田監督は、草笛さんやオレは、年寄りとは呼べないと持ち上げてくれていたんだけど、草笛さんはホント元気だよな。いつまでも活躍して欲しいね。その相手役である編集者を演じるのは、オレの中学校の後輩で、オレのことを敬愛してくれている唐沢寿明ちゃんだ。ネタバラシになるからこれ以上は言わないけど、とにかく見どころ満載の作品に仕上がってるからぜひ見てくれよ。
 オレはこの映画の宣伝用のコメントとして、エッセイと映画のタイトルにもなっている“何がめでたい"を、オレだったら"何とめでたい"と言いたい、と送ったんだ。
 『ミュージックプレゼント』で、この日訪れた、東京は北区の梶原銀座という商店街のなかにある、『こばやし玩具店』の小林左仲(すけなか)さんと末子さんご夫婦は、旦那が93歳、奥さんが92歳で元気に店をやってるという、まさに“何とめでたい"夫婦だった。
 もともと先代がこの地で医療機器メーカーをやっていたんだが、空襲で焼失して、左仲さんたち家族は空襲前に岐阜県に疎開したという。その土地で、左仲さんは、何と高校時代には陸上の短距離選手として岐阜県代表として全国大会へ出たんだとよ。末子さんは板橋生まれで、この梶原銀座でお姉さんと一緒に洋品店をやっていて、左仲さんと出会い結婚したんだそうだ。
 佐仲さんはオレより5歳年上ということになるが、元気なんだよ。脳梗塞で倒れて少し不自由だが、リハビリをしたり、店で子どもたちと話をするのが楽しみらしい。下町のジジイらしい減らず口も十分で、オレがああ言やあ、こう言い返す、図々しいジジイだよ、ハハハ。でもこういうジジイにはいつまでも元気でいてほしい。なかなかいい男で、昔は女性にモテたらしいから、おかみさんも大変だったんじゃねぇのか。この日は、仕事をしながらジャズシンガーとしてライブも定期的にやっているという娘の直子さんも会話に参戦したぞ。こういう場にいると、本来の『ミュージックプレゼント』の良さが発揮できるってもんだな。
 おもちゃと言えば、昔懐かしいブリキのオモチャは今や、絶滅危惧品種で、店頭でもほぼ品切れらしい。でも、この店の中には昔ながらのいい雰囲気が充満してたぞ。そんな店で、夫婦の佇まいを見て、オレは、『九十歳。何とめでたい』という気持ちを新たにしたぜ。ジジイババア諸君には、このようないい歳の重ね方を目指して欲しいもんだよ。

 さて、7月の『マムちゃんねる』は、落語家の柳家喬太郎さんが登場だ。今年は『落語協会』百周年だ。その落語協会の押しも押されもせぬ大人気落語家の一人だから、さぞかし落語の話で盛り上がっただろうって。いやいや、喬太郎ちゃんはウルトラマン、ウルトラセブンの絶大なるファンなので、7月10日『ウルトラマンの日』にちなんで、ウルトラマン、ウルトラセブンの話に今回は終始したよ。他の話は一切なしだ。なんて贅沢な回なんだ、ハハハ。それにしても、喬太郎ちゃんはホントに知識が豊富なんだよ。科学特捜隊のシャツなんか着やがってな。『ウルトラセブン』については、登場した星人、怪獣についてや、ドラマの一つひとつのディテールについてオレより全然詳しいんだよ。どういうことだ、ハハハ。まぁ、いずれにしてもその辺りを熱っぽく語る喬太郎ちゃんの様子は、噺を聞くのとはまた違った魅力だ。ぜひ、見てくれよ! 
 これからが夏本番。みんな、体にだけは気をつけてくれよ。じゃあまたな!!


 

 

(構成・伊波達也)

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