マムシ流 つれづれ草 第71回
【平和な国家は、成熟した文化を知る人間が創ると心得よ】
老若男女諸君! 二十四節気では立冬、冬になったな。そのとおりに、あっという間に秋が過ぎていくな。もっと秋を味わいてぇよな。今、若者は、タイパ(タイムパフォーマンス)と言って、録画しておいた映像やYouTubeなんかを倍速で見るらしいが、季節だけは倍速じゃなくてゆっくりと体感したいもんだ。四季があるのが日本の素晴らしさなんだからな。
さて、11月前半は文化づいてるぞ。まぁ、知性あふれるオレは一年365日、文化のなかにどっぷり浸かってるけどな、ハハハ。
11月3日の文化の日には、オレの弟分である古谷敏と『マムちゃん ビンちゃん わが青春の映画音楽』という文化の日にふさわしいイベントに出たよ。要は、オレたち二人が、大好きな映画、ゆかりの映画、思い出に残る映画のサウンドトラックをセレクトして、目の前の5SPECIALというバンドの面々が演奏してくれ、グレース美香ちゃんが歌ってくれた後に、それぞれの映画にまつわる話を二人でしていくという構成だったんだよ。
前半は『遥かなる山の呼び声』(シェーン)、『鐘の鳴る丘(とんがり帽子)』(鐘の鳴る丘)から始まって、『5つの銅貨』(5つの銅貨)、『フィナーレ』(太陽がいっぱい)まで、珠玉の12曲を聴かせてもらった。何度聴いても色褪せない名曲揃いだよ。
休憩をはさんでの後半は、我々が懐かしいウルトラシリーズ(『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』)をメインに13曲を演奏してくれた。『笑点』のテーマには驚いたけどな、ハハハ。
映画のサウンドトラックは、心の琴線に触れるよな。映像自体を思い出すのはもちろん、当時の世相や自分のことを思い出したり、新たな記憶を上書きしたり、いろいろなエピソードが溢れ出てきたり、いろんなところに枝葉が広がっていく感じがしていいよ。特にフィルム映画世代の我々にとっては豊かな時間が流れたな。秋の夜長、若者諸君には、昔の名作映画をじっくりと味わって欲しいね。倍速じゃなくな、ハハハ。
その1週間後には、オレが客員教授を務める聖徳大学の文化祭、『聖徳祭』で一般の人も参加しての公開講座を催したぞ。『介護を快護に』というテーマだ。オレの講演会を5人の学生自らがプロジェクトを組んで、企画・運営してくれたんだ。嬉しいね。
いつも述べているとおり、今、介護の世界は大変なんだよ。介護する側、受ける側ともに将来に暗雲が立ち込めている。それを解決するためには、双方についての手厚い対応が必要なんだよ。働く側には良好な労働環境と賃金、受ける側には安心して介護を受けられる環境と安価な利用料金だよ。これらが解決できないで、豊かな先進国と言えるか? 文化度の高い国と言えるか? 平和で安全な国と言えるか? ってことだよ。介護というのは国の文化度にも関わってくるとオレは思う。この日はオレの講演の後に、SOMPOケアの相談役でオレの飲み友達、遠藤健さんが、これからの介護にとって大切なことやテクノロジーを利用しての効率良い介護について、わかりやすいスライドと動画を使って説明してくれた。実に興味深かったよ。2040年には介護する側の人員が57万人足らなくなるというからな。
ただし、これは、介護する側の改革なんだ。でも、介護を受ける側にとっての改革施策がこれからの社会には重要なんだよ。ここを実現できるのは政治だろ。だから政治家には介護は文化であるということをもっともっと実感してもらわないと困るんだよ。この日本を平和にするためには成熟した文化を育んでいくことが大切だ。その一つに介護福祉があるということをもっと政治家は考えるべきだよ。介護する側される側双方が守られなくちゃ、平和な成熟した文化国家とは言えないよ。頼むぜ、政治家諸君!
オレは引き続き、老若男女が楽しくコミュニケーションをとれる文化の豊かな世の中作りに尽力していくからな。
さて、11月15日の『マムちゃんねる』2回目は、映画の字幕翻訳家、通訳者の戸田奈津子さんが再び登場だ。今月は映画づいてるな。映画にまつわる興味深い話をテンポのいい戸田さんから聞けるのは実に楽しい。諸君もぜひじっくり味わってくれ。よろしく!
(構成・伊波達也)